ピスコ・ブランデー
(ペルー)
ピスコ・ブランデーについて
南米ペルーの葡萄栽培は1520年代、インカ帝国を滅ぼしたフランシスコ・ピサロがぶどう苗をスペインから持ち入れた時点から始まる。そして南米大陸で最初の蒸留は、17世紀に入ってから、ここペルーのイカ渓谷でスタートされたと言われたいる。西欧から移住した人が、西欧から移植したマスカット系葡萄で造ったのが始まりである。その伝統が今に引き継がれているのがペルーとチリで造られている世界で名高いピスコ・ブランデーである。ちなみにピスコとはペルーの首都リマの南にある漁港の町の名前である。
ピスコ・ブランデー発祥地イカ渓谷の葡萄畑とアンデス山脈
1995年5月21日ピスコを求めての日記
今日はペルーの首都リマのミラ・フローレス地区のホテルで目を覚ます。早朝、久しぶり温かいお湯のシャワーを浴びる事ができた。そしてフロントでチェクアウトを済ますとホテルの小さな小女が2人何にもわからない僕を、治安の悪い街中は危険だと、リマの中心街にあるバスターミナルまで引率してくれ、バスの切符の手配をしてくれた。どこの国でもそうだが本当に大人より子供達のほうが外国の観光客に対しての接し方を知っている。バスでブランデー産地イカまでは砂漠の中を横切るパン・アメリカンハイウェィを飛ばすこと5時間でついた。バスはイカの町の中心につくと、待ち構えるタクシーの群れの中のやさしそうなドライバーをつかまえ、郊外にある小さなブランデー工場、ボデガス・スナペを訪れた。
イカの町郊外にある小さなワインブランデー製造所
今回、訪れたブランデー、ワイン製造所
ボデガス・スナンペ | 原始的なワイン造りから始まりブランデー蒸を行う小さなボデガ |
ボデガス・ビスタ・アレグレ | ペルーで最も人気のある大きなブランデー製造所 |
ボデガス・タカマ | ペルーで最高の赤ワインを産するワイナリー |
ピスコ・ブランデーができるまで
ぶどうの収穫から圧搾
セメントプールで素足で葡萄を潰すスナンペ 近代的な葡萄圧搾器、ビスタ・アレグレ
南アメリカのペルーは、位置的に南半球にあたるため、葡萄の収穫期が2月から3月に行われます。現在、ペルー最大の葡萄産地イカ(ICA)には、ヨーロッパ系の高級赤ワイン用葡萄品種、カベルネ・ソーヴィニョン、マルベック、メルローが、そして白ワイン用葡萄として、ピノ・ブラン、モスカテルが頻繁に栽培されていますが。昔からの良いブランデーを生み出す葡萄としてこの地の葡萄、ケブランタ(QUEBRANTA)が使われています。私が訪れた、小さな蒸留所ボデガス・スナンベではいまだにセメントプール(写真上左)にケブランタ葡萄を入れて、女性達が裸足で歌を歌いながら葡萄を圧搾する作業が行われています。一方近代的な、ボデガス・ビスタ・アレグレ蒸留所では、フランス産とアルゼンチン産(写真右上)の葡萄圧搾器が使われており、アルゼンチン産葡萄圧搾機はフランス産の物より早く葡萄を圧搾できるとのことです。
発酵・蒸留・瓶詰め
家族経営の小さなワイン醸造所のセメント製の小さな発酵槽、壁に描かれたインディオの絵画なんともペルーらしさを象徴している。
上の写真のセメントのプール又圧搾機で潰されたケブランタ葡萄のグレープジュースをワインにするためには簡単な方法、すなわち自然発酵をするため左の発酵槽に流し込まれる。槽の中では、、ぶどう粒の皮を覆っている灰色の層に含まれているイーストの作用により、糖分がアルコールと炭酸ガスに変る化学反応が起こる。一般には葡萄粒内の全糖分がアルコールとなるまでイーストの作用が続く、アルコールが15度以上になるとイーストは作用できず発酵が止まり、りっぱなフレッシュな辛口ワインができる。
小さなセメントタンクで発酵されたアルコール10度前後のピスコ産のワインは左のひょうたん型した銅製のポットスチル入れられる、ポットスチルの底では高熱の炎により中に閉じ込められたワインは水が沸騰する点100度の手前、78度で蒸気となりポットスチルの頭部のホースから気体となり右の大きな円形の銅製のかまぼこの中で冷やされ再びアルコール度の高い液体となる、写真左のひょうたん型のポットスチルには水が残り、右の円形のかまぼこにはアルコールの高いお酒が気体となり分離される。
ポットスチルの蒸留にいより気体になったピスコワイン、再び冷却されアルコールの高いブランデーとなり地下にある樽に流れるようにすい込まれるようにしたたり落ちる。
蒸留された、無色透明の香りのきわだつピスコブランデーは、インカ帝国のプレコロンビアの人形の形をした瓶に詰められる、一本、一本こまめに筆を入れるボデガス・ビスタ・アレグレの仕事人達、まさにボトルにデザインする筆さばきは芸術である!!!
名門、ボデガス・ビスタ・アレグレでは年間7百万リットルのワインが生産されているが、そのうち五百万リットルがピスコ・ブランデーになる。
テロリストとワイン事情
1980年代後半、ペルーのテロリスト集団、センデロ・ルミノソ(輝く道)の資金源の収集場として狙われていた、ペルー最高のワイナリー、ボデガス・タカマの中庭、ここでは今もライフル小銃を肩にかけた警備員が目を光らし警備にあたっている。1992年、就任してまもないアルベルト・フジモリ大統領のテロ撲滅運動にてペルー最大のテロリストのリーダを逮捕、1996年日本大使館襲撃事件にて、トゥパクアマル革命運動(MRTA)を撲滅ペルーの治安は良くなりつつある一方、貧困に悩むこの国の課題は多いい
眼光の厳しい小銃を手にした警備員が見守るワイナリーの入り口を通過するじゅんろうを乗せたタクシー
センデロ・ルミノソ(輝く道) 南部アンデスのアヤクチョ県で生まれた農民運動が広がり、地方の革命分子や都会のテロリスト、コカの生産農家などを巻き込んで成立。センデロ・ルミノソは、毛沢東主義に基ずき農民と労働者の国家政権そ目標に掲げているが、数え切れないほどの爆破、暗殺事件などの無差別テロ行為で知られ、「南米のポル・ポト」との異名もある。中国共産党の幹部学校で理論を学んだ最高指導者の元哲学教授、アビマエル・グスマンは終身刑で服役中。 |
トゥパク・アマル革命運動(MRTA) 1983年に結成されたキューバ社会主義革命を掲げる都市型ゲリラ。最高責任者のビクトル・ポライは1992年6月に逮捕され、終身刑で服役中。メンバーの多くはキューバで訓練を受けたプロの戦闘員。1996年12月ペルーのリマにある日本大使公邸襲撃事件事件は記憶に新しい。この事件でMRTAのゲリラ14人がすべて射殺され、活動が困難な状態になっている。組織の名は、スペインの植民地支配への反乱を起こしたインカ人トゥパク・アマルにちなむ。 |
ペルーのワイン事情
ペルーで最高の赤ワインを造る、ボデガス・タカマの試飲室
ペルーで最高のカベルネ・ソーヴィニョンを造るボデガスタカマでは、葡萄は2月〜3月に摘み取られる。南半球に位置する葡萄栽培地はほぼ同じ時期に葡萄を摘む。
ペルーのイカでは、高級葡萄品種、カベルネ・ソーヴィニョンを始め、メルロー、マルベックなども勢力的に栽培されている。
イカの町でつくられる高級ワインは、イタリア・ヴェネット産コネリアーノとユーゴスラビアのザグレブ産の木樽が使われワインは熟成される。高級品は1〜5年の熟成を経え出荷される。
ペルーで飲まれている一般的な赤ワインは甘口である。
ピスコ・ブランデーを使ったカクテル
ピスコ・サワー (ピスコ・ブランデーを使用した最も有名なカクテル)
氷を入れたステンレス製のシェーカーにピスコ・ブランデー(45ml)をいれ、タマゴの黄身を取り除いた卵白、レモン(30ml)、最後に砂糖(1tsp)をいれ強くシェークすし、フルート型のカクテルグラスに入れて出来上がり。ペルー国内はもとより世界中でも愛されているカクテル。
サンチョ・ピサ カクテル、ピスコ・サワーのWサイズ
アルガロビー (南米ペルーでしか飲めないトロピカルカクテル)
南米ペルーに咲き乱れる、アルガロボー(紫紅色の花、マメ科の木)の蜜とピスコ・ブランデーをミキシングしたペルー幻のカクテル。 絶品!!!
ソル・パラカス (パラカス文明の由来を持つカクテル)
氷を入れたステンレス製のシェーカーにピスコ・ブランデー(45ml)フルーツジュース(150ml)をシェ―クする。大型のクラッシュ・アイスの入ったカクテルグラスに注ぎ、その後、赤ワインとグレナデン・シロップをフロートすると、グラスの中はパラカス文明の燃える太陽が輝くうつくしいカクテルができあがる。ペルーの浜辺で飲んだら人間のルーツに戻った酔い心地になる。
ペリカン・ロン・パンチ (ナンだかわからないカクテル)
ピスコ・ブランデーとデュボネをクラッシュ・アイスの入ったカクテルグラスの中でミキシングしたもの。
以上のカクテルはペルーでしか飲めないので必ず飲むことをおすすめします
ペルーの食事事情
ペルーは水産大国であり、魚介類が豊富である。さらにアルゼンチンから安くておいしい牛肉が入ることもあり、驚くほどの安い値段でボリュームたっぷりの料理が出てくる。野菜に関してもタマネギ、トマト、トウモロコシが原産国ということもあり、普段僕達が日本で口にするものより数倍味が濃い。衛生面はあまりいいとは言えないが、下痢を覚悟ですべての物に挑戦すれば本当においしい料理に巡り会える!!それではペルーの代表的なおいしい料理を紹介しよう。
セビチェ(Cebiche)
新鮮な白身の魚の切り身に、レモン汁、タマネギ、野菜、サラダ油、香辛料などをつけ合わせた、ペルーの代表料理。特にCORVINAのセビチェはおすすめ。
アンティクーチョ(Anticucho)
牛の肉、内臓、血のソーセージなどを大きな串にさして焼いたもの。いちばんうえにジャガイモがついているのが特徴である。南米でよく見かける料理、焼鳥のジャンボ版!!
サンコチャド(Sancochado)
肉、トウモロコシ、カボチャ、タマネギ、ジャガイモ、などの入ったおいしいスープ、本当に美味しい!!
チュぺ・デ・カマロネス(Chupe de Camarones)
フランス料理もビックリ!!大きな川エビの入った、ミルク入りのスープ。アレキパ地方でポピュラーな料理。
マサモラ・モラダ(Masamorra Mprada)
紫色のトウモロコシを煮詰めて固めたゼリー状の御菓子、アンデスの素朴な風味、ぜひ一度!!
タマレス(Tamales)
トウモロコシの粉を練り、そこに鶏肉などを加え、トウモロコシの皮で包んで蒸したもの、日本のお好み焼きのように色々なバリエーションがある。
序言 セビチェを食わずしてペルー料理は語れない ジュンロウ
ペルー事情
日本からペルーへ
日本から地球の裏側ペルーまでは飛行機を利用するのが一番早い、東京成田空港からペルーリマのホルヘ・チャベス国際空港へ直行便は週一便ヴァリグ・ブラジル航空がある、しかし航空運賃が高いので時間はかかるが、アメリカ・ロス・アンジェルス経由もしくはマイアミ経由をおすすめします。
ちなみに乗り継ぎなしの、直行便でも20時間と飛行機内で過ごさなければならない気の遠くなるような旅になりますので、まさに忍耐の旅になることを覚悟!!!
ペルーの首都リマからワイン産地、ピスコ、イカまでの行き方
リマの大きなバス・ターミナルから,ORMENO,TEPAS,ROGGERO社のバスと乗合バスコレクティーボが出ている。所要時間約5時間、バスの窓から見える白い砂漠は驚きのパノラマ、約600円の運賃。
ワイン産地イカから有名なナスカの地上絵はすぐそば、ぜひ訪れてみよう。
治安 (コレだけは頭に叩き込もう)
ペルーの治安は、たぶん南米諸国でも3本の指に入る悪さではないかと思われる。しかし、どこも治安が悪いのではなく、町ごとに治安の悪い場所がある。特に、スラム街、駅周辺、暗い路地、観光客の集まる場所などはスリ、泥棒に出くわす確率の高い代表的な場所だ!!
また、遺跡など人のいないような場所には、暴漢が待ち伏せしている事もあるので要注意!!
トラブルに合わないためには、カメラ、時計、指輪の金目の物は絶対につけて歩かない事。ひとり歩きも避けることが絶対原則。どんな時も、どんな所でも油断は禁物である。だからといってペルーが恐い国かというとそうでもなく、武器や刃物を持った武装ではなく、その国の状況を下調べをして、知識武装していれば独り旅でも大丈夫と断言できる。
とりあえずペルーの旅は知識武装がトラブルから身を守ってくれる。
ジュンロウの格言
アミーゴ達とピスコブランデーを囲んで記念撮影(ビスタ・アレグレ)
最後に一言
治安情勢の不安定なペルーで、日本の感覚をそのまま持ち込むのは大変危険である。しかし、あまり緊張していても旅はたのしめない。地元の人に危ない場所などを聞いて注意を守って行動しよう。
そして、インカ文明の漂うミステリアスなワインに酔いしれよう。
そして、最後のリマ滞在日、5月23日深夜、リマ市内、僕の宿泊地から1Km離れない、アベニード・ラパス通りのホテルで爆弾テロがあって、観光客が数名命を落とした事件があった。
そのホテルは、僕が泊まった5倍近くの宿泊料のいいホテルだった。ここ、ペルーでは日本のようにお金で安全が買えると思っては決していけない。しかし、ペルーの人々の日本人に対する人々の優しさ、貧しい中にも力強く生きる人間の強さは、絶対に忘れないであろう。